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身体を芯から温め、セルフケアで疲れをほぐす。冬の寒さに負けない「いたわり術」を学ぶ三日間
年末年始の不摂生が後を引き、なんとなく身体が重い。だるい感覚が抜けきらないまま、厳しい冬を過ごしている。そんな人たちに向け、「自分自身をやさしく労る(=セルフケア)時間を」と提案するイベントが「ぽかぽかぽんぽんぽん 〜あなたとあたたまる 三日間〜」。
身体があたたまる飲食店をはじめ、日々の疲れを解きほぐす体験型セルフケア、古くからの養生の知恵を学ぶワークショップ。専門家が「いたわり」の知見をシェアするトークショー。会場全体を熱気が包む音楽ライブなど、心も身体もぽかぽかになった冬の三日間。その模様をレポートします。
- 取材・執筆
- 榎並紀行(やじろべえ)
- 撮影
- 上村窓
- 編集
- 服部桃子(CINRA, Inc.)
こたつでくつろぎながら、人気飲食店のホカホカメニューを味わう
日本列島が寒気に覆われた1月下旬。底冷えする寒さから逃れるように、イベント会場のPLAT UMEKITAにはたくさんの人々が来訪。こたつに入って身体を休めながらホカホカグルメを味わったり、日々の疲れを解きほぐすワークショップに参加したり、セルフケアにまつわるトークショーに耳を傾けていました。
イベント名のとおり、テーマは「あたたまる」。“ぽかぽかぽんぽん”の「ぽかぽか」は、身体を芯からじんわりと温めること。「ぽんぽん」は、滋養があり、冷え性の改善が期待できる食べ物を食べたりして満腹になること。心身両面から元気になれる、グルメと催しが目白押しの三日間です。
会場内の一角には「ぽかぽん飲食ブース」が登場。熱々の香港粥、ホカホカの肉まん、体内の新陳代謝を促すキムチやスパイスカレー、日本茶、中国茶……などなど。関西のライフスタイルマガジン『SAVVY(サヴィ)』がセレクトした人気店が集まり、自慢の「ぽかぽん」メニューが提供されていました。
体質や体調に合わせて食材をチョイスし、自分だけの「養生茶」をつくる
会期中の催しは、昼と夜の二部構成。昼はワークショップ、夜はトークショー&音楽ライブとなっていて、サウナの達人やピラティスインストラクター、薬剤師など、各方面の専門家が「セルフケア」、「いたわり」あるいは「ぽかぽか」にまつわる知見をシェアしてくれました。
無印良品の一部店舗内にある「まちの保健室(※)」が開催した「自分だけの養生茶ワークショップ」は、漢方理論に基づいた体質チェックをもとに、いまの自分に合った素材を使ってオリジナルのブレンド茶をつくるワークショップ。
無印良品の「まちの保健室」……日頃の健康にまつわる悩みを気軽に相談できる場所として、無印良品の一部店舗(2026年2月1日時点で全国5店舗)にて展開。健康相談のほか、血圧や身長・体重、肌の水分量などの測定、漢方やヨガなどさまざまなテーマのイベント、ワークショップも実施。一部店舗では薬局を併設し、薬剤師あるいは薬を販売できる資格者が常駐。漢方や和漢茶も販売していて、体質や悩みに合わせた提案を行っている
ワークショップは60分。まずは根岸さんから「薬膳」や「養生」の基礎知識についてレクチャーがあったのち、参加者の体質・体調、好みに合わせたお茶をブレンド。オリジナルの養生茶をつくるという流れです。
気血水の「気」はエネルギー、「血」は血液、「水」は血液以外の液体を指します。このうちいずれかが不足、あるいは停滞すると体に変調をきたすというのが「気血水」の考え方。エネルギー不足や血の不足、水の不足など、「自分に足りないもの」を知ることで、適切なケア方法や摂るべき食材が見えてくるといいます。
根岸
冬の養生の基本は体を温めること。たとえば、「気虚」の方はエネルギーが不足し、温める力が弱まっています。胃腸に不調をきたしているケースも多いため、キノコ類や芋類など消化がいい食べ物を意識的に摂って体を温めることをおすすめしています。逆に、水分が不足している「気虚」の方は体が火照りやすいため、火照りを冷ますようなお茶を飲むのがいいでしょう。
根岸
板藍根は、ホソバタイセイという植物の根です。中国では風邪薬としても用いられる生薬で、のど飴やお茶の素材にも使われています。冬のおすすめ素材ではありますが、多く摂りすぎると体を冷やす性質もあるため、2〜3個程度入れていただくといいと思います。ほかにも、たとえば目の疲れが気になる方はクコの実など、お悩みに応じてお選びいただければと思います。もちろん、テイスティングしていただいて、お気に入りの味、香りの素材をチョイスするのもOKです。
薬膳や漢方というと、どこかとっつきにくい、難しそう、あるいは「苦そう」といったイメージもありますが、こうやってお湯で煮出すだけで簡単に、好みに合わせて摂ることも可能。さまざまな性質の素材を常備しておき、そのときどきの不調に合わせてお茶として摂取するのもアリかもしれません。
根岸
スーパーで売られている身近な食材のなかにも、薬膳として用いられてきたものはあります。今日は寒いから体を温めるものを食べよう、といった具合に日頃の食生活から意識していただくのがいいと思います。
30分の休憩を挟み、続いて行われたのはピラティスインストラクター・廣木愛美さんによるセルフマッサージ実演。「好きな服が似合う私に。自信をまとう『美姿勢』セルフケア」と題し、日常のスキマ時間で気軽にできるケアについて知るトークショーです。
理学療法士資格を持つ廣木さんは、医療知識に基づいた的確な身体評価力を強みに、姿勢改善・パフォーマンス向上・ボディメイク指導を実施。国内外トップレベルの現場で身体のサポートを行ってきました。そんなプロフェッショナルが、実演を交えつつ「美姿勢セルフケア」を教えてくれるとあって、会場はあっという間に満席に。
廣木
寒い季節は背中が丸くなったり体が縮こまったりしやすく、その結果、身体に変調をきたす場合があります。肩が上がると肩こりの原因になりますし、姿勢が悪いと内臓の働きを阻害し、消化機能が落ちてしまうこともあるんです。また、たとえばずっと同じ姿勢でデスクワークをしていると血流が悪くなって代謝が落ちたり、循環が悪くなって手足の増え、むくみにつながったりしてしまうことも。とはいえ、いきなりトレーナーの指導を受けるのはハードルが高いので、まずは日常的にできるセルフケアを覚えていただけたらと思います。
廣木
足は私たちの土台です。歩き方もさることながら「足の(地面への)つき方」が重要なんです。つき方が悪いと姿勢の崩れにもつながりますし、足は心臓から最も遠いためしっかり動かさないと循環が悪くなってしまう。足の指を手で持って、痛くなるくらい動かしましょう。テレビを見ながら短時間で構いませんので、毎日続けることが大事です。
足裏以外にも、デスクワークの人は特に固まりやすいという梨状筋(股関節の動きに関わる筋肉)のストレッチ、ふくらはぎの循環を促す動き、背骨を動かすストレッチなどを丁寧に解説。運動習慣がない人にとっては軽く汗ばむくらいハードな動きですが、毎日やることで姿勢が整い、ラクにできるようになるのだとか。
廣木
デスクワークで体が固まったまま、悪い姿勢のまま過ごしていると、急にガクンと体に異変が起こる場合もあります。大事なのは、ストレッチによって体をリセットすること。1日10分でもいいので、セルフケアを習慣化してほしいですね。
サウナ、マッサージ、食事。達人に学ぶセルフケアで、忙しい毎日を“ぽかぽか”に
夜の部は、日替わりゲストを招いてのトークショー。1日目は笹野美紀恵さんによる「滋養トークショー」。笹野さんの実家はサウナの聖地と呼ばれる静岡県の「サウナしきじ」。「サウナの聖地【しきじ】直伝! 冷えを癒やす究極のいたわり術」と題し、養生のためのサウナ体験について語ってくれました。
「サウナは単なる熱い箱じゃない」。そんな想いから、目的・地域の特徴に応じたオートクチュール型サウナをプロデュースしている笹野さん。ホテルから診療所のサウナまで幅広く手掛けていますが、それぞれ目的やアプローチはまったく異なるといいます。
笹野
たとえば、2023年10月にオープンした「風SAUNA」は宮崎県延岡市にある医療施設「大貫診療所」に併設されています。50代や60代になってくると、筋肉や血管が脆くなったり、汗をかきづらくなったりしますよね。そうなると、(高齢者の方が多く通う)診療所に併設するサウナはそこまで温度が高くなく、体に負担をかけずに入れるものが望ましい。サウナと一口に言っても「ととのう」ことだけが目的ではありません。風SAUNAのように医師や薬剤師監修のもと、ウェルネスを意識したサウナがもっと増えてもいいと考えています。
笹野さんの体験を交えた「サウナと養生」について、さらには昨今の国内サウナ事情や世界のサウナ・温浴文化についてなど話題は多岐に渡り、どんどんディープに。なかでも「サウナ室では『無』になることをおすすめしたい。だから、私がプロデュースするサウナにはテレビは付いていません」という笹野さんの言葉には、多くのお客さんが頷き、共感していました。
2日目のトークショーは、俳優・モデル・タレントとして活動する坂東希さんをゲストにお迎え。「忙しい毎日を“ぽかぽか”に変える、心と身体のセルフケア」と題して、坂東さんが日常的に行っているセルフケアについてうかがいました。
長時間の撮影や長距離移動で生活が不規則になることも多いという坂東さん。疲れを溜め込まないよう、心と身体のケアには気を遣っているといいます。
坂東
撮影現場では初めてお仕事をする方も多く、無意識のうちに気を張っているのか、帰宅後にどっと疲れを感じることもあるので、疲労を持ち越さないためのセルフケアは意識的にやっています。特に外ロケの場合はずっと寒いところにいて体が固まってしまうこともあるので、お風呂に浸かって身体を温めたり、マッサージボールで背中をほぐしたり。なるべく良い状態を保って、翌日も元気な状態で仕事に向かえるよう心がけています。
ほかにも、睡眠時間を保つため「帰宅中に、料理や家事、入浴などのルーティンを効率よく済ませるためのイメージトレーニングをする。イメトレどおりにすべてを綺麗に終わらせられたときは達成感がある」「もずくを食べると元気が出る。舞台中など稽古が連日続く時は、冷蔵庫にストックしておく」「体を冷やさないために温かいルイボスティーを持ち歩く」「お腹まで覆えるインナーを愛用している」など、独自のセルフケア術を明かす坂東さん。
坂東
今日はケアについて色々とピックアップしてお話しましたが、何もしないでぼーっと過ごすことも全然あります。ワンちゃんと散歩をしたら満足して、あとはずっとゴロゴロ寝ているだけで休日が終わることも。休みの日でもつい「何かしなきゃ」「努力しなきゃ」と焦ってしまいがちだけど、「そもそも普段ちゃんと働いているだけで偉い! 大丈夫!」と自分に言い聞かせて、割り切って休むことも大事なんじゃないかなと思います。
フィナーレは荒谷翔大さんのライブ。会場の熱気もマックスに
3日目の夕方。イベントのラストを飾るのは、シンガーソングライター・荒谷翔大さんによる「冬の“ぽかぽか”ライブ」です。
『ピーナッツバター』『Focus』『煌めきワンダー』『東京』。アコースティックギター一本で、次々と自身の代表曲を歌い上げる荒谷さん。心に染み入る歌詞と、胸がじんわり熱くなるような歌声。そこにいる誰もが、荒谷さんが奏でる音楽の世界に浸り、身体を揺らしていました。
かくして、三日間にわたる「ぽかぽかぽんぽんぽん」も閉幕。食、サウナ、漢方、ストレッチ、こたつ、そして音楽。「ぽかぽか」をキーワードに多種多様な要素が詰まったイベントは、昼の部・夜の部ともに大盛況。常ににぎわいが絶えませんでした。
凍えるような寒さから逃れ、ふらっと温まりに訪れた場所で、ウェルビーイングを高めるヒントを得る。まさに、PLAT UNEKITAが掲げる理想を体現するような三日間だったといえそうです。