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笑顔がめぐる場所で見つけた、共生のヒント――「注文をまちがえてもええやんカフェ」開催レポート

PLAT UMEKITAとTALKS cafe & barが共催する、食べることから未来を考えるシリーズイベント「Food Studies(フードスタディーズ)」。その第3弾として、2025年9月21日(日)に「注文をまちがえてもええやんカフェ」が開催された。本レポートでは、社会福祉法人ジー・ケー社会貢献会、社会福祉法人ほしの会の協力のもと、1日限りのカフェをオープンし、ドキュメンタリー映画の上映やトークセッションを通じて、来場者と共に「認知症」に関する理解を深めた一日を振り返る。
- 執筆
- 野村蘭(Harch Inc.)
- 撮影
- TALKS cafe & bar
- 編集
- Harch Inc.
「注文をまちがえてもええやんカフェ」オープン!
毎年9月21日は、国際アルツハイマー病協会(ADI)が制定し、世界保健機関(WHO)も支援する「世界アルツハイマーデー」である。日本でも、この日を「認知症の日」と定め、さまざまな啓発活動が行われている。
その一つが、一般社団法人「注文をまちがえる料理店」の呼びかけによる「ま、いっかの日」だ。この日に合わせて、料理店を舞台にした取り組みが全国各地で実施される。PLAT UMEKITAとTALKS cafe & barもその趣旨に賛同し、1日限りの「注文をまちがえてもええやんカフェ」をオープンした。
エプロン姿で来場者を迎えたのは、社会福祉法人ジー・ケー社会貢献会 グルメ杵屋社会貢献の家と、社会福祉法人ほしの会を利用する5名の方々だ。







イベント終了後には、感想が数多く寄せられた。中でも印象的だったのは、介護現場で働くスタッフの言葉だ。
「『迷惑かけてごめんなー』と言われることが多い中、店員さんとして『ありがとう』『また来てくださいね』と言っている姿を見るのは、本当に嬉しかったです」
「特養やデイサービスでお会いする時とはまた違った、キラキラした笑顔が見れました。施設でも関わり方を改めて考えさせられるいい機会になりました」
また、来場者からも次のような声が寄せられた。
「この取り組みに関心があり、参加しました。企業の中でどのように理解を広げ、文化をつくっていくのかに関心があります。(介護世代のスタッフへの配慮など)」
「とても楽しく、心おだやかになる一日でした。誰もが誰かを認め、許しあい、おだやかな心で接することができれば、より良い社会や世界になるのではないかと思いました」
「誰もが役割を持ち、社会に貢献し、人とつながることの大切さを改めて感じました。」
映画とクロストークで考える「認知症」
ランチの後は、会場をPLAT UMEKITAに移し、大阪・北浜を舞台に、認知症の状態にある母と二人で暮らす娘の日常を描いたドキュメンタリー映画『徘徊 ママリン87歳の夏』を上映。
映画上映後には、社会福祉法人ほしの会 理事長の池田美佐子さん、社会福祉法人ジー・ケー社会貢献会 グルメ杵屋社会貢献の家 相談員の幾田英貴さん、株式会社エルワールド 代表取締役(TALKS cafe & bar)の高橋香織さん、そしてPLAT UMEKITA企画編集室ディレクター・TOPPAN株式会社の木村和也が登壇し、クロストークを実施した。








「注文をまちがえてもええやんカフェ」の開催にあたっては、大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 准教授・山川みやえ先生、公益財団法人 浅香山病院 認知症専門医・釜江和恵先生に意見を伺いながら企画した。

クロストークの最後に、木村は釜江先生がおっしゃった言葉を振り返った。
「今回のイベントの参加者は、認知症に対してもともと興味や問題意識を持っている人たちです。しかし、医療の現場から見ると、世の中には認知症に対して関心の低い人たちがたくさんいます。次の課題は、そうした関心のない層にどうアプローチし、どう関心を持ってもらうかです」(釜江先生)
「注文をまちがえてもええやんカフェ」で得た学びを、より広い社会へとどう広げていくか——。その問いが、次の一歩につながっていきそうだ。
(photo: TALKS cafe & bar )